読者の感想と考察

1986年12月20日の内村鑑三の霊言には、イエス誕生の日の風景を霊視したという部分があって、その日は午前中から夕方まで雪が降って10cmぐらい積もったとのことでした。普通に読めば、夜には雪は降ってなかったわけですが、その霊言が収録された『内村鑑三霊示集』(土屋書店刊)という本では、第7章2節の題が「雪の降る聖夜に、イエスは誕生した」となっていて、なぜか霊言の内容とは違っている題がつけられてしまっています。霊言では夜に雪が降っていたとは述べられていないので、「雪が積もった聖夜に、イエスは誕生した」とするのがより正確な表現かと思います。その日に雪が降った可能性はあるかということを考察しておきたいと思います。

新約聖書のルカによる福音書では、イエス誕生時には野宿で夜番をしながら羊の群れを見守っていた羊飼いたちに知らされて、羊飼いたちは確認して帰ったということになっていて、イエス誕生前に雪が降って積もっていたかどうかということまでは書かれてはいないのですが、霊言によれば、粉雪でなくてボタン雪が降ったということでしたから、雪が降るぐらい寒いとはいっても比較的気温は高めで、10cmぐらいの積雪なら夜であっても外には出られたぐらいの寒さだったいうことにはなるでしょう。

ベツレヘム郊外の羊飼いの野というのは「ミグダル・エデル(羊の群れの塔)」と呼ばれる所にあったようで、内村鑑三がアメリカに留学する前年の 1883年に出版された、ユダヤ人でアルフレッド・イーダーシャイムという名の新約聖書の学者が書いた "The Life and Times of Jesus the Messiah" という本によると、ベツレヘム郊外にあるミグダル・エデルの傍の羊の群れは、普通の群れではなくて、エルサレムの神殿に捧げるための特別な群れで、そこでは最高の品質の羊として、よく管理されて育てられた羊が飼われていたそうです。つまり、普通の羊飼いなら、夕方になると羊を囲いの中に入れて自分たちはテントの中で寝てしまうところですが、そのミグダル・エデルにいた羊飼いたちというのは、安息日に休めないだけではなくて、夜だろうが、寒かろうが、冬だろうが、雪だろうが、休みなく交替で羊を見守っていなければいけない人たちだったということで、聖夜の屋外は銀世界だったという可能性もあるかと思います(夜に銀世界が見えることはないでしょうが)。

また、イエスが生まれた日がクリスマスだったかどうかについても聖書には書かれておらず、イエスが生まれた日に何があったかということから推測するしかなさそうです。これもルカによる福音書によれば、ヨセフとマリアにはベツレヘム(ダビデの町)で住民登録をしなければならないという厄介な用事があったわけですが、ガリラヤの町ナザレからベツレヘムまでは、100km以上の距離があるので長旅になります。ユダヤの慣習で、ハヌカ(光の祭り)といった家族や親戚が帰省して集うようなお祭りがある時期なら、為政者としても住民登録をさせるのに都合がよかっただろうと思います。日本語版ウィキペディアの「ユダヤ暦」の項にある表をみると、その期間は古代の暦では第9の月から第10の月にあたり、閏月があった年ならクリスマスが含まれる可能性もあるようです。ただ、仮にイエスが誕生した日がハヌカの期間中だったとしても、それが冬至で太陽の復活を祝うミトラ教等の祭りの日と一致していたかどうかは分かりません。

キリスト教の教会暦ではイエスの誕生を祝うクリスマスというのは「12月24日の日没から12月25日の日没まで」を指すとされているようですが、歴史的にはイエスの誕生から200年後ぐらいにギリシアのアテナイ出身であるアレクサンドリアのクレメンスという神学者が5月20日と推定したものの、三位一体論が正統とされた325年の第1ニカイア公会議で冬至の日がキリストの誕生を祝う日と決められ、その後、354年にローマ教皇リベリウスがクリスマスをイエス・キリストの誕生日と定めたようです。これはイエス・キリストとローマ化されていた太陽神とを一体とみなすことができ、ローマの異教徒をキリスト教に同化させるのに都合がよかっただろうと思います。内村鑑三の霊言では、「クリスマスに魂の郷愁というものを感じる」ということで、イエスの誕生日としてクリスマスを強く推していましたので、過去世では古くからあったミトラ教等にも何らかの形で関わっていたのではないかと思われます。

ちなみに、大川隆法総裁はクリスマスにはそれほど関心はないようで、『救世の法』第4章によれば、ある支部をクリスマス前の12月20日ごろに巡錫したときに支部の入り口に大きなクリスマスツリーが立っていたのを見て、何とも言えない違和感を覚えながら建物に入ったとのことでした。

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